「ミヤ、なんて顔してんの。」
「……いや、なんか、」
「謝ったら怒るよ。」
ノアの声は確実にミヤコの謝罪を遮っていた。
ミヤコが視線を持ち上げる。目が合った。
「ミヤは、何も悪いことしてないんだよ。」
それは、そうかもしれない。
だけどせっかく楽しかったのに、急に自分が辛い現実を引き戻してきてしまった。
ミヤコはそれがどうしても許せない気がしたのだ。
目を背け続けることはできない。話を、しなければならなかった。
「……ノアは、」ミヤコは静かに問いかける。「なんで、国の外で倒れてた?」
問いかけにノアは、どんな苦情も示さなかった。
来るだろうと予想していた、そんな調子でいた。
「ミヤは全部、ハルから聞いた?」
「うん。」
「じゃあ、この館の詳しい話は?」
「それは、聞いてない。」
「なら、それから話そう。」
なんの躊躇もなく話を始めるノアに、ミヤコは悟った。
あぁノアは、きっと全部話すつもりでいたんだろうな、と。ミヤコがこの館を訪れた瞬間から覚悟していたのだろう。いや、もっと前かもしれない。
ミヤコはそれがとても、悲しいような気がした。
「この館は、昔から城が隠してる場所なんだ。」ノアの話を、ミヤコは黙って聞いた。
「俺みたいな人間を隠すところとして、昔からずっとある。簡単に言って、身代わり留置所、って感じかな。」
「身代わり留置所……。」
「そんな感じ、っていうだけの話。王族が、民衆から隠しておきたい人間を入れておく場所。牢獄とは違うけど、家とも違う。
今はハルが許さないみたいでかけてないけど、昔は扉を外から閉めてたんだ。」


