Different world story





「じゃあどうすんの。」つまらなそうな色を乗せたノアが聞き返してくる。

「んー……」ミヤコは唸る。街の中と違って、することが限られる室内では選択肢が少なかった。

 しかしふと、館内をもう一度見渡して思いつく。


「そうだ、じゃあこの館内、案内してよ。」


 ミヤコの提案に、ノアは首を傾け、肩を少し持ち上げた。


「また案内かよ。」

「うん。今日一日はお前俺の案内係。」

「もうすぐ日付変わるけど。」

「そしたら、なんか話しよう。」


 椅子かなんかに座ってゆっくり。

 そう付け加えて「どうよ」とノアに意見を求む。ノアはミヤコを見下ろして、ため息交じりに首肯した。


「ミヤがそれでいいなら。」


 ミヤコは笑って見せる。

 ノアの言葉が、先ほど聞いたハルトの話を思い起こさせた。


『ノアは絶対に城には入らないって、ハルが幸せならそれでいいって――』


 なるほどハルトは、きっとこんな気持ちだったんだろうなと、ミヤコは胸中で思った。




―――――




 館の内装は古いが至って綺麗だった。

 しかしどこか生活感がない。

 そのわけを尋ねると、ノアは「だってここ、俺ひとりしか住んでないし。」と平然と答えた。

 こんなにいくつもの部屋をひとりで使えるわけがない、というのは当然か。

 ミヤコは納得しながらノアの後をついて行く。