「ハルトにノアのこと、教えてもらったからさ。」
「ハルに?」
「うん。遊びに来た。」
いろんな意図を含ませてそう言ったミヤコに、ノアは勘付いたらしい。
遊びに来たと言ったミヤコに向けて、苦笑を漏らしたからだ。
「……いろいろ、聞いたみたいだな。」
ミヤコは肩を竦めて見せた。
「否定はしない。」
曖昧な表現で返事をし、ミヤコはノアへと歩み寄る。
目の前まで来ると、ノアの肩にかかっていたタオルを掴み、それを頭に載せて雫の落ちる髪の毛をわしゃわしゃと拭いてやった。
「ほら、いつまで突っ立ってんの。ちゃんと拭かないと風邪引くだろ。」
「え、あぁ……」
ノアはたった今まで、自分が風呂上がりだということを忘れていたのだろう。
思い出したような返事にミヤコは短く笑った。
そのまま髪の毛を拭いてやれば、ノアは慣れない風に目を瞑った。
誰かに髪の毛を拭いてもらう、なんていうことが、きっと今までなかったからに違いない。
なんだかそんなノアの様子を見ていたら、夕刻に覚えたあの感覚が蘇ってきた。胸の奥がどうにも落ち着かないような感じ。
何故だか無性に、ノアを抱きしめてあげたくなった。
いやいや、抱き締めたいってなんだそれは。相手は赤子じゃあるまいし。
そうやって否定してみても、慣れずにくすぐったそうにしているノアを見上げると、その気持ちは偽れないような気がした。
なんだかな、とミヤコは複雑な心境になる。
あたし何やってんだろう、と。


