すると目の前にひとつの館のような建物が現れた。
記憶したルートを思い返すに、ここがノアの居る離れという場所らしい。
ハルトとその護衛に会ってから共に城へと来たものの、その後はノアの姿を見ないなと思っていたら、こんな場所に連れて来られていたのか。
ミヤコは館をもう一度見上げる。
意を決して扉の前まで行き、ドアノブを見つめて立ち止まっていると、不意にミヤコの周りを光が舞った。
大丈夫ですから、というハルトの意思が伝わってくるように思えた。
「……そうだね。ありがとう。」
ミヤコがお礼を言うと、光はもう一度くるりとミヤコを回って、すっと消えた。
「よし。」意気込んでノブを掴む。そして引っ張ると、ギィッという古めかしい音と共に、扉が開いた。
鍵は開いているのか。とミヤコは少々安堵した。鍵まで閉まって居たら、それこそ監禁のようなものだから不安だったのだ。
しかし横目にふと映った片方の扉に、南京錠が引っ掛けられていることに息を止める。
これは、もしかしたら昔は鍵をかけていたのかもしれない。
予想に過ぎないが当たっているだろう。きっとハルトがそのことに怒ったのだ。
だから今は使われていないように錆びれて、片方の扉に引っ掛けられているだけになっている。
「…………。」
ミヤコは腰にさしていた剣をひとたび抜いて、南京錠へと剣先を向けた。
ガキンッ! と耳触りな音が響く。引っ掛けられていたはずの南京錠が地面に落下した。
ミヤコは剣で南京錠を破壊したのだ。
「……これはハルトが怒るのもわかるな。」
だってあたしもムカついた。
ミヤコは剣を鞘に戻し、扉をくぐると立ち止まる。


