「それから、どうやったらノアが楽しそうに笑ってくれるのか、俺ずっと考えてたんですっ……でもノアは何があっても笑ってくれなくて、どうしたらいいのかわからなくて……。
だけど、今日、ノアがあなたと居るところを見たという人が、言ってたんです。すごく、楽しそうに笑ってましたって……」
「……え」
「だから思ったんですっ。ミヤコさんならきっと、ノアを助けてくれるんじゃないかって」
「…………。」
「俺じゃダメなんですっだって俺はっ……お願いです、ミヤコさん……ノアを、助けてくださいっ!」
ミヤコに、痛々しいほどの思いが伝わってきた。
テーブルに額をつけるほどに頭を下げたハルトの、その顔下にあるテーブルには、ぽたりぽたりと涙が落ちる。
ミヤコはその涙をどうしても見て居られなかった。
それだけだ、とミヤコは胸中で言い切った。涙を見るのは得意じゃないのだ。
だから勢いよく立ち上がった。
「――わかりました。」
ミヤコはハッキリと了承の意を口にした。
途端にハルトが顔を上げる。綺麗な顔は涙で台無しだった。
「本当、ですか……っ」
「あたしは嘘つきません。」
「……ノアに自分の性別も身分も偽ってたのに……?」
「それとこれとは別です。」
あれには事情があったのだ。こちらの件には偽る理由がない。
そこでミヤコは思い出す。そうだ、ノアには自分が女だとバレているのだろうか。
「ハルトさん、ノアにあたしの性別と身分、言いましたか?」
「いえ、ノアには何も話してません。きっとノアはミヤコさんのことを知らないはずなので、わからないとは思いますが……」
「よかった。じゃあ、あたしは引き続き男ってことで通してもらえますか。」
「えぇ!?」


