初めて自国から一人で出たが、なかなか面白いかもしれない。

 と、ミヤコは馬を走らせながら思った。

 濃い青をした空はどこまでも広い。風は穏やか。空気はあたたかい。天候は良好だ。

 馬を走らせるのをやめ、ゆっくりと歩かせる。後ろを振り返ると、先ほどまで自分の居た国は、左右どこにも見えなかった。

 よし、とミヤコは手綱を持つ手で拳を作る。

 どうやら護衛は撒けたようだ、と。







―find the Happy end―
――前編――







 ミヤコは自国から一時逃亡を図っていた。

 その理由というのは、『次代王になるはずの現王子・イズミが行方をくらませたので、イズミが戻ってくるまでミヤコが代わりを務めよ』という王からの命令が心底面倒で逃げ出した、なんともくだらないものだった。

 次代王、現王子であるイズミは、ミヤコの兄だ。イズミは放浪癖があり、帰ってきたかと思えば早々に姿を消す至極厄介な人物だった。

 その上、国に帰ってくるまでの期間が長い。一体どこをほっつき歩いているのやら。

 そんな兄の代わりをしろ、というのは、百歩譲ったとしても無理のある話だった。

 何故ならミヤコは“妹”だ。正真正銘、女性なのだ。もっと言えば姫なのだ。

 いくら剣術に秀でていようと、いくら容姿が優れていようと、無理なものは無理である。