「ノアのことなんですけど。」
ミヤコの質問内容を察したのか、ハルトの表情が一変する。
嬉しそうだったのがまるきり消え、どういうわけか寂しそうな顔つきへと変わった。
感情が顔に出やすいのだろうか、とミヤコはそれを見ていて思う。
わかりやすくて何よりだが、それでは他言できないこともすぐにバレてしまいそうだ。
「ノアの、ことですか……」
「そうです。顔が同じですし、何より親しく見えるので。もしかして、と。」
「もしかして……?」
「双子なんじゃないかと思って。」
それはミヤコの憶測にすぎなかった。
けれど可能性は低くないだろうと思い、あえて口にしたのだ。反応がわかりやすいハルトならば、真実を隠そうとしても顔に出るだろう、と。
事実、ハルトの表情は目に見えてそれが正解だと言いかねないものになった。
やはりこの王子に隠し事は無理だろうな、とミヤコは心中で苦笑した。
「……ご名答ですか。」
「…………。はい……」観念したようにハルトはうなずいた。「俺とノアは、正真正銘の双子です……」
「じゃあ、どうして」ミヤコは一度、そこで言葉を切った。「……どうして、ノアは国の外で倒れてたんですか。」
双子ということは、どちらも現王子のはずである。
ハルトは間違いなく王子として生きている。着ている服もシンプルながらに高価なものだ。
しかし対するノアと言えば、一般民と同じような服装だった。しかもフードを目深く被り、顔を隠していたのだ。
おまけに出会った当初は、衰弱していたといっても過言ではないだろう。
腹を空かせて倒れている王子の話など聞いたことがない。
ミヤコの問いかけに、ハルトは徐々にうつむいてしまった。
話すことができないのか、それともどう言えばいいか悩んでいるのか。


