果たして、ラクサー国の王子が放浪癖の持ち主で今回も行方をくらませました、などと暴露していいものだろうか。
いや、もしかするとそれは知られているかもしれない。
男装していたミヤコのことを一目で隣国の姫だとわかったハルトが、まさかイズミを知らないわけがないだろう。
しかし、だからと言って、イズミの代わりとして男装させられてました、という事実は吐露してよいものか、否か。
ミヤコがあるだけの思考力を働かせ、考えを練りに練っているところ、黙っていることに耐えかねたのか「ええと……」とハルトが申し訳なさそうに。
「もしかして、イズミさんに関わった話ですか……?」
核心も核心だった。
これはもうはぐらかすのは至難だろう、とミヤコは腹をくくってうなずいた。
「そうです、ヤツに関わった理由です。」
「やっぱりそうだったんですか!」
「やっぱり……?」
何故だか嬉しそうに身を乗り出してくるハルトに、ミヤコはその言葉と表情の意図が読めずに眉をひそめる。
するとハルトは慌てた様子で「すみません!」とソファに座り直した。余談ではあるが、ミヤコは自分の目力に気が付いていない。
「あの、もしかしたらミヤコさんは覚えてないかもしれないんですが……」ハルトは紅茶のカップを見下ろしながら話し始める。
「この国とあなたの国、ラクサー国は昔とても親交が深くて、ミヤコさんもイズミさんも、よくここへ遊びに来てくれてたんです」
「…………。」どうしようまったく覚えてない。
「ここ数年はそれもなくなってしまったんですが、イズミさんは時々、昔みたいに遊びに来てくれてるんです」
「えそうなんですか。」
「はい。だから、お二人の兄妹関係はよく知ってるんです。イズミさんが、ミヤコさんをよくからかっているのとか!」
「なんという恥さらし……。」
「なので、今回もイズミさんがミヤコさんを困らせてるのかなあと思って。あ、それと、イズミさんは今この国に居るみたいですよ!」
「なんだと。」


