Different world story





 馬の足音が響いてくる。それがひとつではないことも、音を聞けば把握できた。

 ミヤコは反射的に振り向いていた。

 視界に映る、橙色の外灯に照らされた道の中、向こうのほうから走ってきた馬は、白馬だった。後方に茶色い毛色の馬にまたがる護衛がついていた。

 護衛……? つまり、あの白馬は――。

 ミヤコがハッとした時。


「……っ!」


 同じく後ろを振り返っていたノアが、息を止めた。

 それとピタリのタイミングで、白馬が急停止した。

 ミヤコは顔を上げる。

 そうして、数メートル先の白馬にまたがった人物の顔を見て、目を見張った。


「……ハル……」


 隣でノアが、極々小さな声で呟く。

 それをきっと、白馬の王子は聞き逃さなかったのだろう。


「――ノアッ!」


 確かに。確かに“ノア”と名を叫び、王子は白馬を飛び降り駆けてくる。

 走る足を緩めることなく、勢いづいたままに、王子はノアに飛びついた。

 ノアは無抵抗にそれを受け止める。慣れているような感じさえした。


「よかった……本当に無事でよかったあ……!」

「……ん。」


 ノアに抱き着いたまま、どういうわけか王子は泣き始めてしまった。

 ノアは諦めたような表情で、小さく相槌を打った。

 ミヤコは状況についていけず停止した思考で、その様子をただ眺めることしかできなかった。


 どういうことだ、とミヤコは心中、そればかりを繰り返した。

 何故なら、オウーイ国の王子は似ているどころか、ノアとうり二つの顔をしていたからである。