Different world story





 ザシュッ! と、鋭い音が夜道に響く。ミヤコの背後で、ぐらりと賊のリーダーは揺らめいた。地面に倒れ伏すまで数秒。

 ミヤコはドクドクと騒がしい心臓を右手で押さえつけるように、胸を抑えた。

 そんなミヤコに、ノアは駆け寄る。うつむいているミヤコの肩に手を乗せ、顔を覗き込んだ。


「……大丈夫?」


 うつむいたミヤコの様子がただならないことに、ノアは気が付いたのだろう。

 ミヤコは顔を上げ、うなずく。大丈夫だ、バレてはいない。

 安堵したのも束の間、背後で動く気配があった。

 今度こそ失態は晒すまいと、ミヤコはすぐさま剣を手に取り振り返る。そこには、肩にナイフが突き刺さったまま起き上がる、賊リーダーの姿があった。

 右手には剣が握られている。なかなかにしぶとい。


「……んなのクセに……」


 ぼそりと賊はつぶやいた。ミヤコはそれをしかと聞き取る。


『女のクセに』


 そのセリフは、再びミヤコを憤怒させるには十分だった。

 ミヤコは無言で剣を振りかざす。

 同時に賊リーダーも剣を振り上げていた。

 そうして剣同士がぶつかるかと思えた、瞬間。


 ――ボッ!


 と、剣と剣の間に突如、橙色の炎が現れた。

「なっ……!?」驚いた反動でよろめいたミヤコを、ノアが咄嗟に支えた。

 その背後から、ひとつの声が轟く。


「騎士よ! こんな街中で剣を振るうとは何事か!」