「――ミヤっ!」
ノアの声にハッとした。顔を上げる。リーダーの男が不敵な笑みを浮かべる。
その視線は自分の後ろを。
……しまった、後ろを取られた……っ!
気が付き、秒単位で振り向くが、遅い。
目前に迫る影。振り下ろされる剣。
すべてが絶望の色でミヤコを覆った。
直後。
「……ぐあっ!?」
まさに今、剣を振り下ろそうとしていた男が悲鳴を上げた。
そして剣を取り落す。
ガキンッと地面で跳ねた剣、その横に倒れ込んだ男の背中には、ナイフが3本突き刺さっていた。
まさか、と目を疑う。
ミヤコは弾かれたように顔を上げ、ノアを見た。
ノアの凛とした瞳とぶつかる。その手の指には、ナイフが数本、握られていた。
「……俺は手伝う必要ないかなと思ったけど、そうでもなかったらしいね。」
ナイフを灯りに光らせながら、ノアが口角を持ち上げる。
ミヤコは一瞬、この戦場でありながら、その表情に目を奪われた。
どんな場面であれ、戦いに置いて“一瞬”というのは命取りになる。
ミヤコは実戦経験が浅すぎた。だから咄嗟に伸びてきた手に、抗えなかったのだろう。
背後から伸びてきた手は、ミヤコの首をしかと捕えた。
そんな話をイズミが聞けば、「まだまだ甘いなーミヤコはさー」と、いつものふざけた口調でどやされるのが目に浮かぶようだった。
くそう、と心の中でミヤコは悪態をつく。
一国の姫だから仕方ない、などと片づけられてはたまらない。これは恥ずべき現状だ。


