その表情は険しい。それもそうだろう、どこに居るのか、何者かの気配がする。
ミヤコもただの一般人ではない。状況をすぐに把握した。
穏やかではない空気が辺りに漂い始める。先刻の楽しい雰囲気などなかったかのような空間。ここは同じ街だろうか。
ミヤコはスッと右手を腰へと持っていく。剣があることを確かめ、辺りに視線を巡らせながら柄を握る。
二人はしばらくその状態のまま気配を探っていたが、相手は一向に姿を見せようとしない。
しかし気配はどこかへ行こうともしていないように思う。このままでは埒が明かない。
そう思ったのはミヤコだけではなかったようだ。
「……何者だ。出てこい。」
ノアの低い、ぞわりとするような声が辺りに響いた。そこに普段の姿はない。ミヤコは思わずノアへと顔を向けていた。
が、それよりも早く、二人の前に人影が現れた。ミヤコは咄嗟に視線を前方へと投げる。
人影は5人。背後に気配はないため、これですべてだろう。5人はどれも見覚えのない顔だった。
けれど5人の服装や雰囲気、そして手首に巻かれた赤い布で、およそ見当がつく。
「……賊か。」
ミヤコがつぶやくように言うと、5人の先頭に居た男が肩を竦めた。
「ご名答。だが、盗人のほうじゃないぜ」
「言い方を誤った。賊軍だな。」
「その通り。国に反逆するほうだ、いかしてんだろ?」
何をふざけたことを、とミヤコは剣を握る手に力を込める。
この国のどこに反逆する理由があるというのか。
問い詰めたところで吐くとは思えないし、何より聞いたところでこちらが共感できるわけもない。


