「……ねえ、お兄ちゃん」
「なに?」
「お兄ちゃん、王子様?」
「えっ?」
驚きの声を上げたのはほかでもない、ノアだった。
そんなノアに疑問を持たなかったらしい少女は、少しばかり興奮したように手振りを交えて話を始めた。
「あのね、わたし、昨日の夜、お母さんに見せてもらったのっ」
「……なにを?」
「この国の王子様の写真!」
ノアは口を閉ざした。少女が続ける。
「前の年の、何かのお祭りの時の写真だって、お母さん話してたわっ! その写真に写ってた王子様と、お兄ちゃんとてもそっくりなのっ!」
少女は小さな拳を作って、ノアのほうへ身を乗り出すように語った。
しばらく口と開かなかったノアは、けれど次の瞬間には、優しい色をした笑みを浮かべ、少女の頭を撫でた。
「そっか。でも、残念ながらお兄ちゃんは王子様じゃないよ。ごめんね。」
「やっぱり、そうなの? 少し、写真とふんいきがちがうなあって、思ったの。ごめんなさい、わたし、しつれいなことばかり」
「いいよ、ほら、元気だして。」
「うん、ありがとう。でも、お兄ちゃんとってもきれいな顔してる! わたし、大きくなったらお嫁さんにしてほしいわっ!」
少女の突然の告白に、ノアは一瞬目を見開き、それから笑った。
「あははっ、ありがとう。考えておく。」
「うんっ」
それじゃあね、と少女はうれしそうに手を振り、去って行った。


