それだけは避けたい。
せっかく国を出て、護衛を撒いてまで逃亡してきたのだ。ここですべてを水の泡にするわけにはいかない。
思う存分気晴らしできるまでは、バレてもらっては困るのだ。
「実はその剣、伊達なんじゃないの。」
お菓子屋の前から歩き始めようとしたミヤコに、ノアがからかいを含んだ声色でそう言う。
ミヤコはムッとしてノアを見上げた。たしかに、この程度と言えど身長の差で疑われても仕方ないだろう。
「俺の剣の腕は本物だぞ。」
「ふぅん。」
「自国でも2番目に強い。」
そう答えたミヤコに、ノアはクスクスと笑った。
最初は無表情だったが、話している内に少しずつ表情が顔に現れるようになっていた。
「なんで笑うんだよ。」
「いや、だって“1番強い”って言わなかったから。あぁ、本当なんだなって思って。」
「……まあ、本当だし。」
ミヤコの剣の腕が国で2番目、というのは事実だった。
1番目は例のクソ兄貴、イズミである。
放浪癖があり、特に訓練しているわけでもないのにどこで覚えたか、誰も知らないような剣術を巧みに操る国一の剣の使い手だった。
そのイズミに鍛えられたミヤコは、女性でありながら剣の腕が2番目に強くなったが、イズミに剣を教えられたため、本人にはとうてい勝てそうになかった。
そんなわけでミヤコは、現在剣術2位の座を不動にしない、もはや護衛すらいらない姫だとして有名だった。


