「……今、ノア、あたしの、腕に、キス、」

「したよ。」

「おまえ、それが、どういう、意味か、わかって、」

「もちろん。」


 ヤツは平然と答えて見せた。

 答えて、ミヤコを引き寄せた。


 わああっ……!


 大広場が盛大な拍手と歓声に溢れる。

 皆が手を叩き、口笛を吹き、笑い声を大いに上げる。

 部屋の中ではヤヨイが爆笑し、スーが唖然とし、ミクが「はあ!?」と声を上げ、イズミがやれやれと肩を竦めて笑う。

 テラスではハルトが大慌てし、「お、お幸せに!!」とわけもわからず拍手をする始末。

 国中が笑い、幸福に包まれる瞬間。

 ミヤコは目の前のノアを見上げて、ちょっと怒って見せた。


「……どうすんのこれ。」

「さあ?」


 ダメ? とノアが首を傾げる。意地の悪い笑みはそのままだ。

 何がダメ? だ。まったくコイツは。

 ミヤコは諦めて苦笑した。

 そうして言った。


「ダメって選択肢がないんだけど。」


 答えを聞いて嬉しそうに、彼が笑う。

 なるほど人を好きになるっていうのは、こういうことなんだな。

 と、ミヤコも嬉しくなって笑った。