ミヤコは違う意味で驚いていた。
なんでハルトがそのことを……。
考えてから思い出す。
“アイツはほとんどを知っていた”
バッと振り返ると、部屋に居座っていたイズミがミヤコを見つめ、いつもの笑みで手を振っていた。
お前か。
つまりあの館での会話をイズミは聞いていたということか。殴りたい。
しかしその衝動は後回しだ、とミヤコは握りしめた拳を下ろす。
そしてノアへと顔を向ければ、どうしていいかわからないといった様子で立ち尽くしていた。
ミヤコはそれがなんだかおかしかった。
本当にノアは、与えられることに慣れてない。
仕方ないかと苦笑を漏らし、ミヤコはノアのほうへと足を向ける。
それからノアの背中をぽんと叩く。ノアが我に返ったように振り向いた。
「おめでとう。」
ミヤコはありったけの笑みをノアにあげた。
こんな笑顔はレアだぞ、と内心で言ってやる。
ノアはしばし呆然と、しかしすぐに、お返しと言わんばかりの微笑みを浮かべた。
……それはちょっと、反則。
「ありがとう、ミヤコ。」
ミヤコは目を逸らした。ノアが小さく笑って、ざっとミヤコに背を向けた。
彼は今どんな表情をしているだろう。
なんて、ミヤコは考えた。
ノアは国民を見つめる。
そして凛とした声で。
「――この国を、守って行きます」


