「そうだ、その通りだ!」「よく言った王子!」そこかしこでハルトを称える声が上がった。

 ハルトは驚いた様子で、ミヤコを見た。

 ミヤコはハルトを見つめ、「よかったね」とこっそり伝えた。

「はい」とハルトは安堵の笑みを浮かべた。


「ノアを第二の王子に!」と、国民の誰かが叫んだ。


 わっと大広場は拍手に包まれる。

 そこで、あ、とミヤコは気付く。ハルトの後ろからノアの様子を覗き見る。

 ノアはテラスの手すりから離れ、複雑な表情を浮かべて立っていた。

 焦燥と、不安と、けれど否定もできないだろう、苦渋の目。

 ミヤコは思い出していた。あの館で聞いたノアの本心を。


『どうやって恩返ししようって考えて、じゃあハルは危ない場面に出ることが多いから、守れるようになろうと思って。』


 あの時、ノアは確かにそう言っていた。護衛になりたいと。

 ミヤコは慌ててハルトを見やった。

 違うと、そうじゃないと言わなければ。

 しかし。

 ハルトは、穏やかな笑みで、首を振っていた。

 国民に向けて。


「ノアの望んでいないことは、もうしたくないんです」


 ハルトはノアに視線を向けた。

 意図が読めないらしいノアは、状況がわからず困惑した表情だった。

 そのことにハルトは笑い、そして国民へ。

 こう伝えた。


「――彼を護衛の座に!」


 国民の誰もが目を見張った。

 何故だと誰もが疑問を抱いた。

 どうして護衛?