「こっちに美味しい創作料理を出す店があるんだ。焼き立てパンを使ったサンドイッチが美味しくて。」
「へー。食べたい食べたい。」
「あ、値段はそう高くないから。」
「一応心配してくれてんだ。」
笑いを交えて答えると、ノアは「まあね」と返事をした。
それからミヤコは、ノアの後ろをただついて行くだけに歩いた。
しかしそれは飽きることなく、むしろ楽しい時間だった。
街はどこを見ても新鮮で、ラクサー国にはない家具や置物、小物や装飾品、野菜や果物、お菓子まで珍しく、幾度となく店の前で立ち止まるミヤコにノアはそのたび立ち止まり、待ってくれていた。
「楽しそうだね。」ノアが微笑を浮かべて言った。「子供みたい。」
お菓子の店前で立ち止まり、商品を眺めていたミヤコはパッと顔を上げる。それは初めて言われた言葉だった。
ミヤコは昔から「しっかりしている」と言われてきた。子供みたいとは言われたことがない。
だからちょっと気恥ずかしくなった。決してノアの笑みに一瞬でも見惚れたわけではない。
「……なんだそれ。あた、じゃなくて、俺の方が年上だと思うけど。」
「あれ、そうなんだ。ミヤ、何歳?」
「16」
「ホントだ、年上。俺は15」
俺より背が低いからかな、とノアは付け足す。
うっさいあたしは女だっつってんだろ。
すぐそこまで出かかった言葉をなんとか飲み込んだ。
ここで自分の性別や身分などがバレしてしまえば、後は事情が芋づる式にバレていきそうな悪い予感しかしなかったからである。


