「えーっと、ミクさんどうしたんです。」
「どうしたんですじゃないわよ! どんだけ心配したと思ってんのよ!」
ミヤコは目を点にした。ミクを見下ろす。
ミクは化粧も何もあったものではないように、わんわんやって泣いていた。
こんなに心配かけてたのか、と。ミヤコはそこで、初めて気が付いた。
ミヤコは誰かに心配をかけたことがない。「しっかりしてるね」といつも言われて育ってきた。
だから、国を逃げ出すのも、誰かに頼るのも、誰かに心配をかけるのも、どういうものかわからなかった。
こういうことか、とミヤコは納得した。これは、あんまりいいものじゃないな、と。
心配をしてくれたのはうれしい。でも泣かせるのは好きじゃない。
ミヤコはなんだか複雑だった。
「……うん」と、ミヤコはミクの背中をさすった。
「心配かけてごめんなさい。心配してくれて、ありがとうございます。」
「……いいわよもう。あんたの心配するなんて最初で最後かもしんないんだから。貴重だと思って今回は許してあげるわよ。」
なんだそれ、とミヤコは笑った。
するとミクも顔を上げて、涙を拭って笑い始めた。
自分は幸せ者なんだな、とミヤコは感じた。
自分のために泣いてくれる友人がいることを、幸せと呼ばず、なんというのだろう。
「……で。」
ミヤコはしばらくその幸せにでも浸って居ようかと思ったが、どうもそうはいかないようだと顔を上げた。
顔を上げた先に、居たたまれない様子の余計な者、ミヤコの護衛が立っていた。
国から逃亡を図ったミヤコを追いかけ、結局撒かれてしまった残念な護衛である。
「なんでスーさんまで来ちゃったんだっていうね。」
「なんでとか言うなし!」
くわっと怒るスーさんと呼ばれた護衛は、若干涙目である。


