「やー今日もいい天気ーやべーわー俺輝いてるわー」
「おはよーさん、よう眠れたかー?」
聞き覚えのある、いや、ミヤコにとっては聞き慣れてもはや聞きたくもない声が、部屋中に響き渡った。
ミヤコとノアは、開いたドアのほうへと振り向いた。
そこには普段着のイズミと、護衛のような格好をした、昨夜の踊り子が立っていた。
ミヤコはげんなりと、部屋に入ってくる二人を見据えた。
「イズミ、と、ヤヨイさん……。」
昨夜の踊り子の名はヤヨイと言った。
ミヤコは彼女を知っていた。何故なら昔ながらにイズミと付き合いがあり、加えて変わった喋り方をする美人だったからだ。
昨日は踊り子の恰好で、今日は護衛のような格好。
ヤヨイは特定の職業に就かない。
「おー! ミヤコちゃんドレスめっちゃ似合ってるやーん」
「ヤヨイさんこそ今日は……警備か何かですか。」
「せやせや。ウチは本日いっぱしの警備員やねん」
「なんの情報集めですか。」
「今日はなんもないなあ。ノリやでノリ」
いやノリで警備員とかすんなよ。
と、いうツッコミは心の内だけにしておくミヤコである。
ヤヨイが特定の職業に就かないのは、彼女が不特定の街へ行き、不特定の職業に紛れ込み、そこで情報を得る、いわゆる“情報屋”だからだ。
そのため、昨日は偶然踊り子に扮していた、と、言いたいところだが、それは待っただ。
何故か。
イズミがヤヨイをあの場所に送り込んでいた、というのが後々の説明で判明したからだ。
つまりヤヨイはあの広場で、踊りを披露しながらミヤコたちを探していたのだ。
それを聞いてミヤコは納得した。あの時目が合ったのは、そういう理由からだったのかと。
ちなみに広場の爆発時『賊軍だ!』と知らせてくれたのもヤヨイだったらしい。


