「ミヤコ。」
「だから、なに。」
「……ミャーコ。」
「は?」
「なんでもない。」
ノアはクスッと、穏やかに笑った。
怪訝な表情を浮かべるミヤコは、しかし次にノアが放った、
「ミヤコ、その格好、かわいい。」
と、いう一言で、危うくカップを取り落すところだった。
慌てて紅茶のカップをソーサーに戻し、ミヤコは睨むようにノアを見やった。
案の定とでもいうべきか。ノアは意地の悪い笑みを称えていた。
「な、おま、何を言って、」
「だって俺は騎士姿のミヤコしか見てないから。」
「だからって感想は言わなくていい。」
「似合ってるから、ドレス。」
「…………。」
「かわいいなって、思っただけ。」
あーもう、やめてくれ。
ミヤコは居てもたってもいられず、椅子から立ち上がった。
逃げるように窓辺へ向かう。
長い黒髪を下ろし、うっすらと化粧をし、落ち着いたデザインのすっきりとしたドレスを身に纏ったミヤコ。
その格好は、どこから見ても、まごうことなき姫だった。
それも見目麗しい、まばゆいほどの、お姫様。
窓の外を見下ろすミヤコの後姿を、ノアは目を細めて見つめた。
そこへ。


