道を占領しそうなほどに多い出店、人。どこかから陽気な音楽が響いてくる。笑い声が絶えない。
しばし、ミヤコは足を止め、自分が空気に馴染むよう、大きく深呼吸をした。
うん、悪くない空気だ。
「……なにしてんの。」
隣で一緒に立ち止まっていたノアが、無表情に問うてくる。
何故か羽織った衣服のフードを目深く被っている。見るからに怪しいが、街の人々は気にしていない様子だった。
「いや、いい街だなと思って。」
「……ふぅん。」
「そういえばノアはこの国の出身?」
「まあ、一応。」
「じゃあ、案内してくれると助かる。」
「案内? 俺が?」
「うん、ノアが。俺はこの国、初めて来たから。」
実際は昔、一度だけ国の関係で来たことがあったような記憶もあるが、それをすべて憶えて居るわけではない。
来たことがあったような、という程度の記憶しか脳内には蘇ってこなかった。
ノアはしばらく口を閉ざし、けれど首を縦に振った。肯定の意思だ。
「わかった、案内する。ご飯も食べさせてもらうわけだし。お返しに。」
「よかった。」
ミヤコは微かに笑みを浮かべた。ノアはふいと顔を背けた。
それから先に立って歩き始める。


