偽り父娘



試しに腕を伸ばしてみる。

余裕があるサイズとはいえ、やっぱり動きにくい。


スカートは中学校の時よりも短くした。

高校生って、こんなもんでしょ。


数回折ったスカートを整え、私は扉を開けた。


…朔太郎はまだ、皿を拾っていた。

どんだけ枚数割ったんだろう…。


「朔太郎」


呼ぶと、朔太郎は振り向いた。

朔太郎の真上に立っていた私は見下ろし、朔太郎は見上げる体制になっている。


なかなかない光景だ。


「どう?」

「おー、似合う似合う。いい感じだぞ。ただ…、パンツ見えそうだな」

「え、そう?」

「こっからだと見えそう」

「当たり前でしょ。エロ親父」

「朝からエロエロって、発情してんなよ」

「黙りなさい。ほら、朝ごはん作るから!」


屈んでいる朔太郎を蹴っ飛ばしなから私はキッチンに立った。


…でも、ブレザー動きにくいな。

脱ごうとすると、朔太郎に止められた。


「何?」

「今日は俺が作るよ」


下を見ると、割れた皿はすべて拾ったようだった。


「じゃあ、ちょっと待って」


朔太郎を止め、私は救急箱から絆創膏を取った。

そして、朔太郎の顔についた傷の上に貼った。


でも、朔太郎は何をしてるのかわからないと言うような顔で私を見る。


「破片で切ったんだよ、多分。傷ついてた」

「あ、そうなのか。さんきゅ」


口を指先で擦りながら朔太郎は言う。

照れてる時の朔太郎のくせだ。


「さ、お腹すいた。早くーー」

「はいはい」


朔太郎の苦笑を見て、私は席について朝ごはんを待った。

久しぶりに食べる、朔太郎の作る朝ごはん。


今日は久しぶりが続いて、なんだか懐かしい気分になった。