偽り父娘



――そこで、ハッとした。

忘れてた。自分のことなのに…。


「つか、ユリ。今日はスウェット姿じゃなくて、高校の制服姿で出てきてほしかったな」

「エロ親父」

「はあ?」

「私、今日から高校生だったんだ…」

「……ばーか」


私の呟きに、朔太郎は笑った。

本当に忘れてた。
私、今日から高校生なんだ。


「じゃ、お父様の希望通り、制服に着替えてきまーす」

「お父様って…」

「ジョーダンジョーダン。手、気を付けてね」

「わかってるって」


朔太郎の返事を聞き、私は自分の部屋に戻った。

そして目に入った、新しい制服。


それは、これから始まる高校生活の物語のオープニングでもあった。

これを着る3年間は、一体どんなものになるんだろうか。


そう思いながらまだ固いワイシャツに腕を通し、チェック柄のスカートを履き、同じ柄のリボンをつける。

そして、まだ着にくいブレザーに腕を通すと……完成。


新しい、松原ユリの誕生だ。