「三度目に逢おうとしたそのとき、あたりが異様な空気に包まれた。

俺は走った。知らせてやらなければ。

今はどいつもこいつも自分のことで必死だ。そうしたら若葉は……!」


ゆったりしていたリュートの音が、

強く、大きく、激しくなりました。

いちばん遠くで聴いている少女などは、

両手を胸の前で組み、祈るように目を閉じています。

お客たちはみな、すっかり物語に入り込んでいたので、

固唾を呑んで、青年の次の言葉を待ちました。


「何が起きているのか、マリにはよくわからなかった。

 喧騒の中、マリは置き去りにされんだ。

 女王というのは、本当に、形だけのことだった。


 なぜならマリには、こんな状況さえ、自分で把握することが出来なかった。


 逃げることも、出来なかった。



 気づいた人もいるだろう。



 
 女王マリは、目が見えなかった。」