総司を見送ったフネはくるりと奏に向き直った。
「さぁて。聞かせてもらいまひょか。鬼の住み処に何故おなごがいるのか。」
にこにこと怖いくらい笑うフネに奏は苦笑いした。
一応男装しているつもりだったのだが、早速バレた。
確信を持って言うフネに隠すことは不可能と判断した奏は理由を話すことを決心した。
「訳あって京に来たんですが住む場所がなくてですね、流れで沖田さんと衣食住を賭けて仕合まして………」
「…………………それで、あんさん勝ったんか……」
「えへへ……」
見た目華奢な奏があの壬生浪士組一の剣豪といっても過言でない沖田総司から一本取ったとは…
フネは驚きを隠せない。
と同時にとても興味が湧いた。
「奏はんはおもろいな。気に入りましたわ。」
「光栄です。」
奏とフネは顔を見合わせて笑いあった。
よくよく考えれば奏はこの時代に来て初めて同姓と話をした。
それが奏に大きな安心感を与えた。
「フネさんお母さんみたい!」
「ふふふ。私もあんさんのこと他人と思えないんよ。どうぞ、母と思ってくださいまし。それから、奏はんはまだ隠し事があるでしょう。」
え、と此ばかりにはギクリとした。
「何を根拠に……」
「女の勘どす。」
女の勘、侮りがたし。
いつだったか大学の男の先輩が話してくれた経験談で今まで缶のままで飲んでいた酒をグラスで飲むようになったのを見た彼女さんが浮気を見抜いたらしい。
女の勘ほどの脅威はない。
言い渋る奏に「母に隠し事は如何と。」と抱き締められた。
もう何もかもを見透かされた気がした。
気がつけば口が動いていた。
幸い今はこの店に奏とフネの二人しかいなかった。
「私はこの時代の人間ではないんです。」
