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「あ~きのゆ~うひ~に~て~る~や~ま~も~み~じ」
奏は上機嫌に歌を歌いながら必要な物を取り揃える為に京の町を歩いていた。
季節外れな歌に道行く人は怪訝な顔をするも隣を不機嫌そうに歩く武士を見て納得する。
「どうしたんだい!?総司!そんな不細工な顔して、美丈夫が台無しだ!」
ミュージカルのように大袈裟な言い方をする奏に総司の整った眉がぴくりと動く。
「うるせぇ、嫌味か。」
「その通りだ。」
先程の上機嫌は何処へやら奏はぎろりと総司を睨んだ。
「総司は大体デリカシーがなさすぎるんだ。」
「以前から気になっていたが『でりかしー』とは何ぞや。」
「デリカシーというのは心や感情の繊細さってやつだよ。」
「それが俺にはないと言うのか。」
「そりゃ、もう壊滅的に。」
ふむ、と暫く考える素振りを見せる総司。
何となくあまりよろしくない返答しか来ないような気がする。
だが仲間を疑うのは良くない。
奏は総司の次の言葉に期待した。
「では、良い体でしたと言えばよかったのか。優しい嘘と言うやつだな。土方さんが女に使う決まり文句をアンタにも言ってやりゃ良かったのか。」
少しでも期待した自分を激しく後悔する。
悪気がない分、余計にタチが悪い。
総司の大馬鹿者、土方さんの女の敵、どちらからツッコむべきか。
きっとこの馬鹿にもう何を言っても無駄だということを悟った奏は行き場のない苛立ちを大きな溜め息とともに吐き出した。
