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奏の歓迎会と称した宴会は終盤に差し掛かっていた。
まぁ、何となく予想してはいたが、やはり酒飲みたさの歓迎会だったか。
奏はふふっと小さく笑った。
「何笑ってんだ、おめぇは。」
隣でおとなしく酒を飲んでいた総司がのし掛かってくる。
相当酔っているようだ。
酔っ払いの絡みほど面倒くさいものはない。
奏は顔をしかめた。
助けを求めようとしたが、近藤は既に酔い潰れ、土方は俯いて何やらブツブツと呟いているようだし、原田も腹躍りで此方に注意すら向けてないし、他の幹部も顔を真っ赤にして各々お楽しみ中である。
「おめぇ、酒飲まねぇのか?」
「だから再三言っただろう。」
「アンタの故郷では二十歳を過ぎねぇと酒が飲めねぇっていう規則か。別に破ってもいいじゃねぇか。」
何を言い出すんだ、この兄さんは。
「判った!今から私が芸をやるから、それでチャラっていうのはどうだ?」
「ほぅ、芸か。何をするんだ?」
「歌を歌いましょう。」
そう言うと総司は奏から離れた。
「歌か。悪かねぇな。何という歌だ?」
「滝廉太郎が作曲、武島羽衣が作詞した『花』という曲です。」
奏はそう言うとすうっと息を吸って歌い始めた。
