あの日みつけた女神

視線を点滴へと移した。
この液体が体に流し込まれていなければ僕は倒れてしまう。
点滴だけじゃない。
僕の体は薬がなければ生きてゆけないし、移植手術を受けなければ短い人生に終止符をうつことになる。
しかし、いまだに適合者はおらず、僕はまもなく長い眠りにつくことになるだろう。

「はい。検査終わったわよ!以上なし!冬夜くん、最近調子いいんじゃない?」
看護婦さんらよくとおる高い声で話しながら検査用具を片し始める。
「ありがとうございます。なんだか、ここの空気があってるのかもしれません。」
都会と違ってのどかなこの土地は空気がいい。この病院を経営者が田舎好きでここに病院を建てたらしいけど、こんな田舎だからこそ患者さんの病気の治りがいいのかもしれない。
「そうだったの。それはいいことだわ。あっ!そうだ、さっき葉山がお話があるって言ってたから今日は病室いてね?」
そう言って看護婦さんは足早に病室をでるとパタパタと足音をたてて去っていった。
「林檎でも剥きましょうか?」
山本さんは鞄から真っ赤な林檎を取り出した。
山本さんは毎日のように高そうな果物やお菓子を実費で買ってくる。それだけはない。学校に行けない僕のために自分で選んだ教材や本を惜しげもなく買ってくる。おかげで、僕は学校に行ってなくてもある程度の学力を身につけられた。もちろん、山本さんにの気遣いには感謝しているが、自分のお金なんだから自分のためにに使えばいいのに、山本さんはほとんどのお金を僕のために使ってしまいまるで自分には無頓着だ。
だけど、やっぱり山本さんが持ってくる食べ物はおいしくてついついほおばってしまう
「じゃあ、ひとつお願いします。」
僕が頼むと山本さんは嬉しそうにするすると林檎の皮のロープを作る。
「めしあがれ。」
差し出された林檎をタベると口いっぱいに爽やかな甘みが広がる。
「美味しい。」
僕がつぶやくと、山本さんは満足そうに僕を見た。