Special Edition


放心状態で会食の席に着くと、苦笑いの彼が小声で教えてくれた。

『結婚式の披露宴で使うらしい』って。
何それ……。
聞いてないんだけど?!!!

私、やっぱり嫁ぐ先を見誤ったかも。
今ならまだ籍入れてないし、間に合うかしら?

**

帯がきつくて殆ど食べれなかった。
両親を見送り、郁さんのご両親を見送る。

彼のご両親はセントレアから羽田に戻るらしい。
彼も一緒に帰るのかと思ったら、市内のホテルに泊まるという。

「着替えてからどこかで待ち合わせしないか?」
「はい」
「じゃあ、準備が出来たら連絡して?」
「分かりました」

私はタクシーに乗り込み、実家へと向かった。

**

「郁さん、乗って下さいっ」
「サンキュ」

郁さんがレンタカーを借りると言ったんだけど、さすがに地元の私が運転した方がいいかと思って。
親に車を借りて、ホテルまで彼を迎えに来た。

「どこ行きます?」
「ヘリとクルーザーどっちがいい?」
「はい?………その二択から選ばないとダメですか?」
「とりあえずは」
「………じゃあ、たまには船で」
「OK」

私の返事を聞いた彼は、すぐさまどこかに電話を入れた。
……あ、依頼をするんじゃなくて、キャンセルしてる。
ということは、両方依頼済みだったらしい。

おおおおおお恐ろしいぃぃぃ~~っ!!

でもって、すぐさまナビに行き先を設定してるし。
ホント、『本部長』の力量発揮ですな。
抜かりがないし、やることが素早い。

「よし、出発していいぞ」
「………はい」