「郁さん」
「ん?」
「あの包み、中身はティッシュケースとかじゃ(……ないですよね)?」
「んなわけないだろ」
「……ですよね」
「お義父さん、お義母さん、先に隣の部屋へ」
「……はい」
「彩葉、先に行ってるわね」
「うん」
彼は先に私の両親を隣の部屋へと向かわせた。
「聞いてませんよ」
「何が?」
「怖くて見ることも出来ないじゃないですか」
「何で」
「何でって……」
ダメだ。
庶民の感覚というものが分からない人だった。
「俺なりに努力した結果なんだけど」
「え?」
「いや、……母親が、彩葉のために専用ジェット機用意するだの、車とマンションは必須だの言い出して、父親と結構宥めた結果だから」
「…………あ、なるほど」
専用ジェット機。
さすが、最大手の航空会社を経営するだけのことはある。
私には全くもって必要ないし、理解も出来ないけど。
郁さんなりに頑張ってくれたのね。
「ありがとうございます」
「どう致しまして。ってか、俺の方こそ『ありがとう』だから」
「え?」
「こんな俺と将来を約束してくれて」
「………フフッ」
「大事にするから」
「宜しくお願いします」
額に優しいキスが落とされた、次の瞬間。
「きゃぁ~っ!照れてる彩葉ちゃん、可愛すぎる~~っ!!ちゃんと全部撮れてるわよね?」
「………え?」
お義母様の視線の先を辿ると、かっ、カメラがぁぁぁっ!!
え、えええええっ、どういうことぉぉぉ~っ!?



