Special Edition


ありえないっ!あり得ないっ!アリエナーイッ!!

結納をするにあたって、動画サイトで何度も流れを確認したけど。
何あれ……。

毛氈って、あんなに広々を敷かれるものなの?
しかも白木台って、多くても三つでしょ?

視界に映る白木台は七つあり、そのうちの一つがあり得ないことになってる!!
特注と思われるその白木台は、幅50センチはあろうかという大きさで、その上にドカーンと白い和紙で包まれたものが置かれていて。
その和紙包の上に金色と紅白の水引きで結われた鶴が施された御帯料と書かれたものが鎮座してる。

御帯料とは、新郎側が新婦側に花嫁衣装の帯代として包まれたという起源のもので、現代では結納金というやつだ。
一般的な相場なら、100万円前後だろうが。
この目の前に座る御三方からの御帯料はどうみても100万円ではなさそうだ。

大きさからして数千万はあると思う。
怖くて顔を横に向けられない。

しかも、指輪は既に二つも頂いてるのに、白木台の上に結美和と書かれたものまである。
どうかしてる!
ありえない!!
うちの両親、心臓止まっちゃうからっ!!

***

あっという間に式は無事に執り行われ、会食のために隣の部屋に移動するらしい。

ちょっと待って。
あのお金どうするの?
ここに放置するってこと?

「彩葉、……あれどうやって持って帰るの?」
「知らない」
「郁くんは何だって?」
「知らない」

ほら。
両親が心配してるじゃない。
普通、こうだよね。
あちらが完全にイカれてるんだよ。

「彩葉、行かないのか?」

平然とした顔で彼に呼ばれた。
やっぱり、住む世界が違い過ぎる。
相手、間違えたかも……。