Special Edition


7月上旬、名古屋の高級料亭の別邸にて。

曲線を描いた白洲石には二三崩しの飛石が置かれ、その脇に手水鉢と鹿威しが夏の暑さを和らげるように風流さを感じさせる。
正真木には木斛(もっこく)、景養木には笹が植えられ、青々とした木々が涼しさを醸し出す。
その奥に静かに佇む茶室を兼ねた別邸があり、そこに財前家と環家が集まり、仲人を務める御影夫妻(京夜の両親)も同席している。

人間国宝の本手描きの京友禅で仕立てられた振り袖姿の彩葉。
普段気慣れない着物だからなのか、俯き加減で淑やかに見える。
明るく活発な彼女のイメージとは少し違うその姿を堪能する財前。
目に入れても痛くないとはこのことで、本当に見惚れてしまうほどだ。

二畳ほどの毛氈(せんもう)(赤い布)の上に白木台が設けられ、その上に広蓋が置かれ、結納品一式が並べられている。

目録、親族書、長熨斗、御帯料、寿留女(するめ)子生婦(こんぶ)友志良賀(ともしらが)寿恵廣(すえひろ)家内喜多留(やなぎたる)酒肴料(しゅこうりょう)結美和(ゆびわ)、線香、扇子。

室内の床の間には高砂の掛け軸が掛けられており、格式ある結納だとみてとれる。

「本日はお日柄もよく、ご両家様には誠におめでとうございます。只今より、環 彩葉様と財前 郁様との結納の儀を執り行わせて頂きます」

仲人の挨拶が始まり、室内の空気が厳粛な雰囲気に。