Special Edition


『結婚記念日、いつにする?』

どういう意味?
結婚記念日なんだから、結婚式の日?
それとも入籍する日?

ん?
それって、プロポーズ??

「ええええええええええええ~~っ」
「フフフフフフッ」

郁さんは破顔して私の頭に手を乗せた。

いつも過ぎる彼に無性に腹が立つ。
だって、私は『特別』を期待してたのに。

ポンポンと頭を撫でられる。
しょうがないなぁとでも言いたげな表情で。
私はあなたにとって、それっぽっちの存在なの?
何だか、一気に悲しくなって来たじゃない。

驚いて止まりかけた涙が再び零れ落ちる。
もう、海に沈むのは彼じゃなくて私でもいいか。
そんなことすら脳裏を過るほど、思考が崩壊した、その時。
額に柔らかい感触を感じた。

彼が口づけをしたらしい。

そして、再びぎゅっと抱き締めた。

「彩葉」
「……」
「眼の手術をしようと思ったのは、彩葉の笑顔をもう一度見るためだ」
「……」
「もう二度と見れないかもしれないと諦めもしたけど、やっぱり諦めきれなくて。だから……」
「……」
「俺のこの眼が見えるうちは、毎日見えるところにいてくれ。それと、……ずっと俺に微笑んでて欲しい」
「……はい」
「彩葉、一度しか言わないからな」
「……」
「俺のこの先の人生に彩りを添えて下さい」
「………はいっ」

これが彼のプロポーズ。
『彩葉』という名前にちなんだ彼らしいフレーズで。
彼なりの優しさと愛情が伝わって来る。

拘束していた腕が解かれ、ほんの少し寂しさを覚えた、次の瞬間。
彼は目の前に小さな箱を差し出し、その中から薄暗くても分かるほど大粒のダイヤが嵌め込まれた指輪を取り出した。

そして、左手薬指に着けてる指輪を外し、手にしている指輪を嵌めた。

「こっちのが、正式なやつな」
「っ……」