Special Edition


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「彩葉ちゃん、いらっしゃい!」
「こんばんは、お邪魔します」
「いいのいいの、そんな余所行きの挨拶は。こっちに座って~?」

相変わらずマイペースすぎるお母様だ。
可愛らしい見た目とは正反対に、押しが強い。

「これ、あとで召し上がって下さい」
「あら、いいのに~。郁、来ること話したの?」
「さっき出る時に伝えたよ」
「彩葉ちゃん、次からは手ぶらで来て頂戴ね?」
「………はい」

事前告知無しなのは、お母様の仕業なのか。
なるほど。

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「彩葉ちゃん、これ美味しいわよ~」
「あ、はい」
「あと、これも食べてみて~」
「はい」
「あ、そうだ!取り寄せたお漬物があったはず。ちょっと待っててね~?」
「あ、あの……お母様っ……」
「今何言っても聞いてない」
「………ん」

食事を食べ終え、デザートの洋菓子を頂いてるのに。
漬物を出されるらしい……。

先月来た時も覚悟した。
フランス料理を食事中に、友人から頂いた奈良漬けが絶品だと始まり。
数種類の漬物を食べた後に、まだデザートに到達してない状態で、その友人が送ってくれたというお饅頭を食べさせられた。

確かに絶品と思えるほど美味しいんだけど。
お腹の中は完全にパニクってると思う。
フランス料理のコースの順番も無視して、漬物に行ったと思ったらお饅頭へと飛行路線変更。
更にそのすぐ後にフォアグラのソテーを食すというかなりアグレッシブな経験。
普通では中々味わえない。

だからなのかな。
私が作った、さほど美味しくもない料理でも文句も言わずに食べてくれるのは。