Special Edition


毎日綺麗なCAさんを見てたら、私なんてジャガイモにしか見えないだろうし。
何より、私は可愛げがない。

先輩にもよく言われる。
もっと甘えてもいいんじゃねぇか、って。

甘えたくても素直に甘えれるような性格してないんだから仕方ない。
ガンガン突き進むことは出来ても、媚びを売ったり、縋り付くようなことは出来ない。

そんな風に女の武器を使える人が羨ましい。
だから、『女に見えない』とよく言われるんだ。

男性社会のような外科医の世界で、胸を張って堂々とメスを握るのにはそれなりの覚悟がある。
女性としての幸せを二の次にして来たからこそ、今のこの地位がある。

だけど、それでも……。
たまには、肩の荷を下ろしたくもなる。

誰かにそっと支えて貰いたいし、寄り掛かりたい。
いつまでも一人で仁王立ちして生活するのも疲れて来た。

30歳を過ぎて、気付くのは遅いかもしれないけど。
それでも、可能性が0%じゃない限り、努力はしてみたいから。

**

マンションのすぐ近くにあるスーパーで食材を調達して、彼の家で料理をする。
以前は目玉焼き作るのも四苦八苦したけど、最近はオーソドックスなメニューなら作れるようになった。

本日の献立は、若鶏とかぶの治部煮、ひじきとツナのサラダ、生ハムのカルパッチョ、それとなめこの味噌汁と白米。
物足りないと困るから、漬物コーナーで茄子の浅漬けを買って来た。

ダイニングにセットし終えた私は、リビングのソファーで学会用の論文に取り掛かる。