Special Edition


翌日。
早速、荷物を纏めた。
1週間は居候するつもりで、必要なものをキャリーケースに詰めて出勤する。

「何だ、その荷物。……家出か?」
「はい」
「は?マジか」
「はい。1週間ほど、居住拠点をセレブマンションにしようかと思いまして」
「アポイント取って無さそうな雰囲気だな」
「突撃訪問というやつです」
「相変わらず、猪突猛進な奴だな」
「これが取り柄ですから」
「ま、頑張れよ」

出勤早々先輩にバレた。
って、当たり前か。
当直明けだもんね。
医局にいるのは分かってた。

キャリーケースを部屋の隅に置いて、仕事モードに切り替える。
今日はカテーテルのオペが二件の予定。
カルテをチェックし、必要な検査データを取り寄せる。

***

19時過ぎ。
医局を出た私は、彼のマンションへと向かった。

今日のフライトは国内線4便だと、酒井さんに確認済み。
夕方には乗務後の仕事も終えているはずだと。

きっとその後に本部長業務をする為に社屋に籠ってるんだろうけど。
そこは先手を打っておいた。

酒井さんに出来る限り、早めに仕事を終わりにするように仕込み済み。
さぁ、何時に帰って来るかな?

彼のマンションに到着し、暗証番号を入力して部屋に入る。
久しぶりに来た彼の部屋。
三週間ぶりかな?

部屋は相変わらず整理整頓されており、片付けが必要な所は見当たらない。

冷蔵庫を開けると、前よりは多少なりとも食材が入っているが、料理している気配は感じられず。

「二股はかけてなさそうね」

ずっと気になっていたことの一つ。
他に女が出来たという線。