Special Edition


若い頃の恋愛とは纏う空気が違うというか。
年齢のせいにはしたくないけど、30歳過ぎると、仕事は生活に直結する。
責任のある仕事をしていれば、猶更融通が利かなくなるもの。

分かってる。
最大手の航空会社の後継者だという立場も。
幼い頃からの夢であった操縦士に復帰出来たということも。

だから、彼の邪魔はしたくない。
私にだって夢はある。
あるんだけど……。

最近、夢が霞んで来たように感じる。
別に胸部外科医としての目標を失ったわけじゃない。

教授になること目指して日々努力はしている。

だけど、人って、夢は一つじゃなくてもいいと思うんだよね。
胸部外科医だけじゃなくて、他にも夢があっても。

彼と知り合い、付き合うようになって。
共に時間を過ごすようになって、つくづく思う。

この先の長い人生も、彼と一緒に歩んでいけたらって。

カッコいいとか見た目や地位の問題とは別で。
人として、彼のように常に高みを目指す人に憧れる。

生きていれば、少なからず心が折れそうになることなんてざらで。
それでも、負けずに頑張り続ける強い意志を持ち続けているということに。

そんな人と一緒にいられたら、常に輝き続けられる気がして。

「子供欲しいですけど、その前にある結婚がとてつもなく難しいです」
「……彩葉ちゃん」