「毎日一緒にいたいから、一緒に住もう」
「うん、いいよ」
「え、いいの?」
「住みたいんでしょ?」
「………ん」
あれ?
なんか俺、言い方間違えたか?
彼女は間髪入れずに答えた。
それも、『いいよ』と。
芸能人だし、人気絶頂期だし。
婚約したとはいえ、世間の目もあるだろうし。
そもそも、事務所や養父に相談しなくていいのだろうか?
「事務所に相談しなくて平気か?」
「うん」
「後で怒られても知らないぞ?」
「平気だよ」
「何で言い切れんの?」
「一人暮らしが心配だから、早く同居しろって言われてるし」
「は?」
「お父さん、アンチとかストーカーとか心配なのよ、昔からね」
「………」
アンチやストーカーって……。
そりゃそうだよな。
みんながみんな、常識ある行動をとってくれるわけじゃないよな。
「じゃあ、一緒に住むってことでいいんだな?」
「はいっ」
理解力のある社長さんで本当に有難い。
天真爛漫な彼女が大人になった今でも素直で愛らしく
それでいて、ちょっぴり小悪魔要素もプラスされて
イイ女に成長してくれて心から感謝してる。
国民の彼女を独り占め出来るこの優越感と幸福感は
生涯大事にしていかないとな。
「次の休みに部屋見に行こうか」
「うん」
15年前に突然奪われた彼女との時間を
15年かけて手繰り寄せたこの縁は
これからもずっと続いていくから
こうして彼女と手を取り合って
一つ一つ大事にしていきたい。
「美雨」
「ん?」
俺がずっとそばにいるから。
ご両親の分も。
『美雨』と呼ぶのも俺だけだからな。
眼鏡をそっと外し、彼女の唇に甘く蕩けるようなキスを。
~FIN~



