パチンッと彼の手を軽く叩き、彼の上から元の位置に戻ると。
「キャッ……」
形勢逆転。
完全に不意打ち攻撃を喰らった私は、ソファーに押し倒された。
「仕返しですか?」
「ん」
格闘技を20年以上して来た私にとってはこれくらい朝飯前。
彼をつき飛ばしたり、この状態で締めることも出来る。
だけど、彼に怪我は負わせられない。
ううん、そんなことじゃなくて……。
今の彼の視線から逃げたくない。
普段は見せない、熱のこもった視線を注いでくれてるから。
こんな表情を私だけに見せてくれるなら
押さえ込みに勝てなくても構わない。
ううん、むしろこのままずっと……。
「煽ったのは希和だからな」
知ってる。
彼が恋にも愛にも奥手だってこと。
だけど、疑うことさえ要らないほど
彼は私だけに優しくて、24時間私だけを見ててくれる。
みーなみたいに美人でグラマラスな女性がいても
絶対に靡いたりしないし、寄せ付けることもしない。
だから、こうして毎日幸せを感じていられるんだ。
女優じゃなくて、男性アイドルの大ファンだったら、どうだったんだろう?
……嫉妬してくれるのか?
それとも、やっぱりクールに大人対応しただろうか?
「俺以外のことを考える余裕があるんだ」
「へ?」
ついつい余計な思考になってしまった。
慌てて彼を見ると、目の奥が笑ってない。
完全に魔王様降臨だ……。
どうしよう~~~。



