「京夜様っ」
「っ……、何だよ、いきなり」
思わず、抱きついてしまった。
ソファーに座り、タブレットで株価を見ている彼は
私の不意打ちタックルに驚き、横に押し倒された。
「京夜様と結婚出来て幸せですっ」
「何、今さら」
言葉は素っ気ないけど、分かってる。
本当はこんな風にストレートに言われたら嬉しいんだって。
だってだって、京夜様のほっぺが
ほんのりと赤くなった気がするもの。
「重いぞ」
「2キロ痩せましたけど?」
「痩せたのか?」
「はい」
「………ダイエットでもしてるのか?」
「くすぐったいですっ……」
彼を押し倒し、軽い馬乗り状態の私は
眉間にしわを寄せた魔王様を見下ろしていると
彼は羽交い絞め状態で長い腕を使って
私の体をチェックし始めた。
来月初旬に彼の社長就任記念祝賀パーティーがある。
当然、社長夫人としてドレスを着なければならなくて
最近運動不足気味のボディーが心配になり
少しずつ絞っているところ。
自分の体形からして、ふんわりお姫様ドレスは着れないから
出来るだけシャープなボディーラインを作っておかないと
彼の横に立つのに恥ずかしい想いは出来ない。
「別に太ってないだろ。むしろもっと食べて太ってもいいくらいだ」
「それって、胸が無いって言いたいんですか?」
分かってる。
ぺたんこではないけど、決して豊かとは言えないことくらい。
「んなことは言ってないだろ。……俺は十分満足してるけど?」
「んッ?!」
ソファーに両手をつき塞がっている状態の私のブラウスの襟部分に人差し指を掛け
彼はキュッと口角を上げ、覗き込んだ。



