Special Edition


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混雑する百貨店内を、マネージャーの山本さんから言われた場所へと向かう。

今日は美雨が一日総支配人をするという。

よくテレビで観るようなアレを自分の彼女がするのかと思うと、興味津々。

マネージャーにこっそり連絡を入れたら、タイムスケジュールが送られて来た。

俺は腕時計を確認しながら、地下1階の食品売り場へと。


「うわっ、………なんだこの人混みは」


普段からデパ地下の食料品売り場は混雑しているのは知ってるが、これは異常というもの。

エレベーター前に大行列だったから、階段で来てみたけど。

とても歩けるような状態じゃない。

通勤ラッシュ時の電車とほぼ同じというか、それ以上か。

大きな紙袋やエコバックを手にした人々がごった返している。

仕方なく、空いてそうな階を回ることにした。

どこを歩いても『みーな、みーな』と聞こえて来る。

沢山の人に愛されている彼女が、自分の恋人なんだと改めて実感。

***

「山ちゃん、今何時?」

「17時40分です」

「ふぅ~あと少しで終わる~~」


一日中立ちっぱなしで既に足がパンパン。

辛い表情も出来ないから、本当にしんどい。

人数制限が行われているとはいえ、ライブ会場なのか…

初詣の混雑時と同じというか……

人人人人人……

360度に人がいるような、そんな感じで。

ここ数年で一番の来客数なんじゃないかと思う。


最後の予定の売り場へと向かおうとした、その時。


「えっ?!………来てたの?」

「……ん、大変そうだな」


階段の踊り場で愛しのダーリンに出くわした。