「早速ですが、この書類をご確認の上、署名捺印ををお願い致します」
「はい」
追加で依頼した協賛用の仕事が記載されている契約書だ。
湊はそれをマネージャーと確認し、契約締結へと。
「では、時間が勿体ないですから、どれからサインしましょうか」
「こちらになります」
応接室の隣にある会議室に、所狭しと景品用の商品が置かれている。
湊の事務所が用意したノベルティーだけでは足りないと読んだ京夜は、
販売用の商品と、自社ブランドの非売品などを事前に準備していたのだ。
湊は指を鳴らし手首を回して、準備運動してから取り掛かる。
*****
婦人服売り場で接客にあたる湊。
湊を身近に感じることが出来る機会とあって、行く先々に人々が群がる。
10時開店から3時間が経った頃。
漸く昼食を摂るための休憩が設けられた。
応接室で用意されたお弁当を口にし、食べ終わる頃。
希和は甘い香りを湊の元へと運んで来た。
「良かったら、食後にどうぞ」
「わぁ~!有難うございますっ!今年は可愛いクマちゃんだ!」
希和お手製のラテアート。
湊が甘いもの好きなのは勿論知っていて、
数年前からこうしてさりげなくアピールしているのだ。
「すみません、妻が湊さんの大ファンでして。サイン頂けますか?」
「え?あっ、はいっ!勿論!!でも何で、去年も一昨年もあったのに……?」
「申し訳なくて言い出せなかったようで」
「そうなんですね。遠慮なく仰って下さればいいのに。希和さん、連絡先交換します?」
「えっ?!」
「良かったら、今度一緒にお食事でも」
「いいんですかぁ~」
「是非ぜひ!」



