「なぁ、今週の土曜日って1日仕事なんだよな?」

「え?……あ、うん。18時頃には終わると思うけど、もしかしたらその後に会食が入るかも」

「………ふぅ~~ん」

「何、……その態度」

「久しぶりに1日休みになりそうなのに、と思って」


国家公務員の検事とはいえ、完全週休二日が約束されているわけじゃない。

それこそ、凶悪犯罪を担当する柾にとって、

丸々1日がフリーになるのはかなり貴重なのだ。


「仕事してる時はあまり話せないと思うけど、来る?」

「は?………それって、俺が行けるとこなの?」

「うん」

「どこ?」

「御影百貨店」

「………百貨店ねぇ」

「何、その何か企んでそうな顔」

「べ・つ・に~♪」


不敵な笑みを浮かべる柾に、髪を乾かしている美雨は鏡越しに怪しむ視線を送る。


「百貨店でなにするの?前みたいにイベント?トークショー?撮影会とかか?」

「トークショーは無いと思うけど」

「じゃあ、何すんの?」

「一日支配人」

「は?」

「だから、一日店長みたいに、総支配人ってのをすることになってる」

「テレビのエンタメニュースでよく観るあれか。一日警察署長とか観るよな」

「そそ、それそれ」


ドラマの撮影でバトルシーンを一日撮っていた為、砂埃まみれだった美雨。

シャワーを浴びることなく急いで帰って来たのだ。

柾が久々に自宅に来るとあって……。