ふわりと髪に彼女の指先の感触が……。
決して短髪では無い俺の髪を優しく撫でる蘭。
ゆっくりとした手つきで、何度も何度も優しく撫でて。
ポカポカの陽気と心地いい膝枕の感触と。
そして、彼女自身から俺に触れたいと思ってしてくれた行動に、心の焦りもいつしか掻き消されてゆく。
「周さんの髪って、サラッとしてて触り心地がいいです」
「…………そうか?」
「はい」
「なぁ」
「………はい?」
「俺に触れられるのは嫌か?」
「…………」
「嫌なら無理には触れないようにするけど、俺も男だから限界ってもんがある」
「…………はい」
別に蘭を脅したい訳じゃない。
むしろ、心を開いて貰いたいけど、正直どうやって歩み寄っていいのかも分からない。
今までは俺から触れなくても、女なんて勝手に寄って来てたし。
俺からキスしたいって思わなくても、相手が勝手にその気になって迫って来てたし。
蘭といると、未経験な事ばかりで戸惑ってしまう。
強引に奪う事も出来なくないけど、それじゃあ一発で嫌われてしまいそうで怖い。
惚れた弱みなのかもしれないが、どうにも次の一手が分からない。



