蘭の提案でお弁当をテイクアウトし、郊外の寺院へと足を伸ばした。
緩やかな坂を上り、暫く愛車を走らせると。
辺り一面、桜色の絨毯ならぬ花のカーテンが俺らを歓迎してくれた。
標高が少し高いのもあってか、まだ散り急いでない花々が視界一面に広がって。
風に揺れる木々の葉音と、どこからともなく聞こえてくる鳥の囀り。
ポカポカと柔らかい太陽の日差しと、仄かに香る花の香り。
そして、繋がっている指先の心地良さに思わず目を細めて笑みが零れた。
「まだ、梅も楽しめそうですね」
「………そうだな」
梅や杏が咲き誇る横で、控えめに咲いている桜。
そして、上品な紫色に色づく木蓮が存在感を成しているアーチをくぐりながら、俺らは寺院の敷地内を散策した。
暫く歩くと、敷地内のあちこちに設けられたベンチがあり、運よく空いているそれを発見した。
「蘭、あそこに座ろうか」
「……はい」
蘭と肩を並べてベンチに腰掛ける。
俺らの頭上には7分咲きのソメイヨシノが風にそよいでいる。



