Special Edition



漆黒の鎧を纏い、重厚感のあるボディ。

太陽の光を反射して眩いほどに輝きを放つ。


営業マンの男が丁寧にドアを開けると、中から本革と特有の匂いが漂ってくる。


「ご存知とは思いますが、一通りご説明致します」

「お願いします」


俺の目の前に現れたのは、俺の愛車。

今までコツコツ貯めていたお金で4WDの車を購入した。


本当は自宅へ納車される予定だったのだが、一番最初に蘭を乗せたくて、わざわざ販売店まで引き取りに来たんだ。


一通りの説明を受けている間も蘭は呆気に取られていて、何度も俺の顔を覗き込んで来る。




15分程の説明も終わり、営業マンから鍵を受取りエンジンを掛ける。


「それでは久峨様、何かございましたら、いつでもお気軽にお越し下さいませ」

「有難うございます。……蘭、乗って?」

「え?」

「もう帰るよ?」

「………あ、はいっ!」


助手席に蘭を乗せ、俺は運転席に乗り込み、営業マンに会釈して販売店を後にした。