厨房と販売フロアを間仕切るガラス越しに鋭い視線を向けていると。


「おい、周。目からレーザービームが出てるぞ」

「…………でしょうね」


隣りで作業するリュウさんが、見兼ねて声を掛けて来た。


「そんなに嫌なら、中に閉じ込めておけばいいだろ」

「………そういう訳にも行きませんよ」


俺を気遣って蘭を厨房に軟禁すればいいと言うが、けれど、ずーっと中に閉じ込めておく訳にもいかない。

本人だって、責任感を持って仕事をしている以上、それを無下にする事も出来やしない。

接客の仕事だって、疎かにはしたく無い筈だ。


こんな風に嫉妬心を抱くのも初めてで、俺はどうしていいのか分からない。

そんな俺を見兼ねた親父が、蘭に声を掛けた。


「ランちゃん、悪いね~。少し早いんだが、今のうちに夕食を作って来てくれるかい?」

「あっ、はいっ!!」

「それと……」

「はい、何でしょう?」


親父は蘭を手招きして、耳打ちをした。

親父の言葉に反応するように、蘭が俺に視線を寄越す。


そして、俺を見つめてニコリと微笑んだ。


親父の奴、蘭に何を吹き込んでんだ?