―――――3月下旬


高校を卒業した俺は、1日の大半を自宅厨房で過ごしている。


4月からは隣市の製菓専門学校へ通う事も決まっており、想い描いていた人生を順風満帆に歩んでいる―――――様に思える。

1つを除いては………。



春休みに入った蘭が、毎日のようにバイトに来るのはいいのだが、その蘭目当てに次から次へと男性客が来る。

うちの商品を買ってくれるのは有難いが、正直作り手の想いどころか、パンの味でさえ興味の無さそうな連中ばかり。

そんな連中がこぞって来るものだから、常連さんが来店した際に品切れになっている事もしばしば。


親父は嬉しい悲鳴だと言うけれど、俺は内心苛立っていた。



別に蘭が悪い訳じゃない。

元々可愛いし美人だし、人目を惹く容姿なのは解りきっている事なのだから。


黒い噂が落ち着いて来て、派手な化粧もしなくなった今の蘭は、等身大の女子高生。

しかも、とびきりキレイ可愛い女の子だ!



そんな彼女を世の野郎どもが放っておく訳もなく……。