………ううん、違う。
分かってしまった。
匂いが違うんだ。
一颯くんの部屋だけど、癒されるハーブの香りがしない。
あの香り、すっかり私の安眠剤になってしまったようだ。
……どうしよう。
ずっと目を瞑ってるのに、全然寝れる気がしない。
彼にもう1杯、ハーブティーでも淹れて貰おうかな?
うん、そうして貰おう。
私は彼がいる隣りの部屋へと向かった。
コンコンッ
静かにドアを開けて、中に入る。
「………一颯くん」
「…………」
「………寝てる?」
「…………」
寝てるみたい。
どうしよう、起こしたら怒るかな?
私は静かに彼のもとへ歩み寄り、ベッドサイドに腰掛けた。
ギッとスプリングの音と共に僅かに沈むマットレス。
一颯くんの寝顔、こんな風にじっくり見るのは初めてかも。
鼻筋の通った綺麗な顏。
心地いい声音で囁く唇。
私は無意識に彼の寝顔へと指先を伸ばしていると――――。
「ッ?!」
「………何の真似?」



